「飲食店は3年で7割が潰れる」——こんな話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。確かに飲食業界は廃業率が高いと言われますが、一方で10年、20年と愛され続ける店もあります。
この記事では、飲食店の廃業率に関するデータを整理し、潰れる店と生き残る店の違いを解説します。これから開業を考えている方も、すでに経営している方も、ぜひ参考にしてください。
飲食店の廃業率はどのくらい?
飲食業界の廃業率は、他の業種と比べて高い傾向にあります。
公的データから見る実態
中小企業庁の「中小企業白書」によると、宿泊業・飲食サービス業の開業率と廃業率は以下のようになっています。
| 年度 | 開業率 | 廃業率 |
|---|---|---|
| 2020年 | 5.0% | 6.1% |
| 2021年 | 4.4% | 4.2% |
| 2022年 | 5.1% | 4.0% |
※出典:中小企業庁「中小企業白書」各年版
コロナ禍の2020年は廃業率が高く、その後は回復傾向にありますが、それでも全業種平均(約3%)より高い水準です。
開業からの年数別生存率
日本政策金融公庫の調査によると、飲食店の生存率は以下のような傾向があります。
| 経過年数 | 生存率の目安 |
|---|---|
| 1年後 | 約85% |
| 3年後 | 約65% |
| 5年後 | 約50% |
| 10年後 | 約30% |
つまり、10年後に残っている飲食店は約3割ということになります。この数字をどう捉えるかは人それぞれですが、「何も考えずに経営していては生き残れない」ことは明らかです。
廃業の主な理由
帝国データバンクの調査によると、飲食店の廃業・倒産の理由は以下のようなものが多くなっています。
- 売上不振: 集客できない、リピーターが定着しない
- 資金繰りの悪化: 開業時の借入返済、運転資金の枯渇
- 競合の増加: 近隣に同業種が増え、客を奪われる
- 人手不足: スタッフが採用できない、離職が多い
- 経営者の高齢化・体調不良: 後継者がいない
潰れる飲食店に共通する特徴
廃業する飲食店には、いくつかの共通点があります。以下のような状態に心当たりがある場合は、早めの対策が必要です。
1. 数字を把握していない
売上は見ていても、原価率や人件費率(FL比率)を把握していない店は危険です。
FL比率の目安
| 項目 | 適正範囲 |
|---|---|
| 原価率(Food) | 25〜35% |
| 人件費率(Labor) | 25〜35% |
| FL比率(合計) | 55〜65% |
FL比率が70%を超えると、家賃や光熱費を払った後に利益がほとんど残りません。毎月の数字をチェックする習慣をつけましょう。
2. 新規客ばかりに頼っている
ポータルサイトのクーポンや広告で新規客を集めても、リピートしなければ集客コストがかさむ一方です。
リピート率が低い店は、以下のような問題を抱えていることが多いです。
- 料理・サービスの品質が安定していない
- 「また来たい」と思わせる理由がない
- お客様との関係性を築けていない
3. 競合との差別化ができていない
「普通においしい」だけでは、お客様に選ばれ続けることは難しい時代です。
- この店でしか食べられないメニューがない
- 価格でしか勝負できない
- 「なぜこの店なのか」を説明できない
こうした状態では、近くに競合ができた途端に客足が遠のきます。
4. 変化に対応できていない
飲食業界のトレンドは常に変化しています。
- キャッシュレス決済への対応
- テイクアウト・デリバリーへの対応
- SNSでの情報発信
「うちは昔からこのやり方で」と変化を拒むと、気づいたときには手遅れになっていることがあります。
長く続く店の5つの共通点
10年以上続いている飲食店を見ると、いくつかの共通点があります。
1. 常連客を大切にしている
長く続く店は、常連客との関係性を大切にしています。
- 名前や好みを覚えている
- 常連向けの特別メニューやサービスがある
- 「いつもありがとうございます」の一言を欠かさない
常連客は売上の基盤になるだけでなく、口コミで新しいお客様を連れてきてくれます。
2. 地域に根ざしている
地元の人に愛される店は、安定した経営ができます。
- 地域のイベントに参加する
- 近隣の店舗と協力関係を築く
- 地元の食材を使ったメニューを提供する
観光客や一見さん頼みの経営は、外部環境の変化に弱いです。地域の「行きつけ」になることを目指しましょう。
3. 適正な価格設定をしている
「安くすればお客様が来る」という考えは危険です。長く続く店は、適正な価格で価値を提供しています。
- 原価率と利益率のバランスが取れている
- 値下げではなく、付加価値で勝負している
- 必要に応じて値上げも行っている
安売り競争に巻き込まれると、体力のある大手には勝てません。
4. 人を育てている
オーナーや料理長が一人で抱え込んでいる店は、長続きしにくいです。
- スタッフに仕事を任せられる
- マニュアルや仕組みがある
- 「この人がいないと回らない」状態を避けている
人を育てることで、オーナー自身も身体を壊さずに経営を続けられます。
5. 数字を見ながら改善し続けている
成功している店は、感覚ではなくデータに基づいて経営しています。
- 毎月の売上・利益を把握している
- どのメニューが売れているかを分析している
- 集客施策の効果を測定している
「なんとなく忙しい」「なんとなく暇」ではなく、数字で現状を把握し、改善し続ける姿勢が大切です。
廃業を防ぐための経営戦略
ここからは、具体的な経営戦略を紹介します。
集客の柱を複数持つ
一つの集客方法に頼ると、その方法が使えなくなったときに一気に苦しくなります。
集客チャネルの例
| チャネル | 特徴 |
|---|---|
| Googleマップ | 無料、「近くの店」検索に強い |
| SNS | 無料、ファンとの関係構築 |
| 口コミ・紹介 | 無料、信頼度が高い |
| ポータルサイト | 有料、新規客獲得に強い |
| チラシ・DM | 有料、地域密着型 |
ポータルサイトに月額費用を払っている場合、その費用に見合った成果が出ているかを定期的に確認しましょう。広告費に頼らない集客チャネルを育てることが、安定経営の鍵です。
リピート率を上げる
新規客を獲得するコストは、既存客をリピートさせるコストの5倍と言われています。リピート率を上げることは、利益率の改善に直結します。
リピート率を上げる施策
- LINE公式アカウントで来店後にお礼メッセージを送る
- スタンプカードやポイントカードで再来店を促す
- 常連客には特別感のあるサービスを提供する
紹介を促す仕組みを作る
紹介で来店したお客様は、リピート率が高い傾向にあります。紹介者も被紹介者もメリットがある仕組みを作りましょう。
紹介を増やすコツ
- 紹介カードを作って会計時に渡す
- 「ご友人をお連れください」と声をかける
- 紹介してくれたお客様にお礼を伝える
紹介が増えると、広告費をかけずに新規客を獲得できるようになります。
近隣店舗と協力する
競合と思っていた近隣の店舗も、見方を変えれば協力相手になります。
- 居酒屋とバーで「二次会はあちらへ」と送客し合う
- カフェと雑貨店で相互にショップカードを置く
- 商店街ぐるみでスタンプラリーを企画する
こうした相互送客を行うと、お互いに新規客を獲得できます。
開業前に知っておくべきこと
これから飲食店を開業しようと考えている方は、以下の点を事前に確認しておきましょう。
初期投資は抑える
開業資金が大きいほど、毎月の返済負担も大きくなります。
- 居抜き物件を活用する
- 中古の厨房機器を検討する
- 最初から豪華な内装にしない
日本政策金融公庫の調査によると、飲食店の開業資金の平均は約1,000万円ですが、500万円以下で開業する人も増えています。
運転資金を確保する
開業後すぐに売上が安定することは稀です。少なくとも6ヶ月分の運転資金を確保しておきましょう。
集客の準備を開業前から始める
オープンしてから「どうやってお客様を集めよう」と考えても遅いです。
- 開業前からSNSで発信を始める
- Googleビジネスプロフィールを事前に設定する
- 近隣の店舗に挨拶回りをする
開業初日から来店があるよう、事前に認知を広げておきましょう。
まとめ
飲食店の廃業率は決して低くありませんが、長く愛され続ける店も確実に存在します。その違いは、以下のような点にあります。
生き残る店の特徴
- 数字(売上・原価率・リピート率)を把握している
- 常連客を大切にし、紹介が生まれる仕組みがある
- 地域に根ざし、近隣店舗とも協力関係を築いている
- 変化に対応し、改善し続けている
特に「紹介」と「近隣店舗との相互送客」は、広告費をかけずに新規客を獲得できる方法です。紙のカードでも始められますが、「誰からの紹介か」「どの店舗からの送客が多いか」を把握したい場合は、オクリテのようなデジタル計測ツールを活用すると、効果測定が自動化できます。
長く続く店を目指すなら、日々の数字を見ながら、一つずつ改善を積み重ねていきましょう。
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