試用期間とは
試用期間とは、正式採用の前に、従業員の適性や能力を見極めるための期間です。「仮採用期間」「見習い期間」とも呼ばれます。
労働契約自体は入社日から成立しますが、この期間中は通常よりも解雇が認められやすくなっています。
試用期間の法的位置づけ
解約権留保付労働契約
試用期間は、法的には「解約権留保付労働契約」と解釈されます。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 解約権留保 | 一定の事由があれば契約を解除できる権利を留保 |
| 労働契約 | 入社時点で労働契約は成立している |
つまり: 試用期間中も「雇用されている状態」であり、無条件に解雇できるわけではありません。
本採用拒否(試用期間満了での解雇)
本採用拒否は解雇の一種であり、通常の解雇よりは認められやすいものの、合理的な理由が必要です。
認められる例
- 勤務態度が著しく悪い(無断欠勤、遅刻の繰り返し)
- 能力が著しく不足している(教育しても改善しない)
- 経歴詐称が判明した
- 健康上の理由で勤務困難
認められない例
- 「なんとなく合わない」
- 「思ったより仕事ができない」程度
- 採用時に予測できた事情
試用期間の設定
適切な期間
| 期間 | 特徴 |
|---|---|
| 1〜2ヶ月 | 短い、見極めが難しい |
| 3ヶ月 | 最も一般的 |
| 6ヶ月 | やや長め、じっくり見極め |
| 1年 | 長い、慎重な判断 |
一般的には3〜6ヶ月が適切とされています。1年を超える試用期間は、合理性がないと判断されるリスクがあります。
雇用契約書への記載
第○条(試用期間)
1. 試用期間は、入社日から3ヶ月間とする。
2. 試用期間中に従業員としての適格性を欠くと
認められた場合は、本採用しないことがある。
3. 試用期間は、必要に応じて延長することがある。
4. 試用期間中の労働条件は以下の通りとする。
・賃金: 月給○○万円(本採用後: ○○万円)
試用期間中の労働条件
給与の設定
試用期間中の給与を本採用後より低く設定することは可能です。ただし、最低賃金を下回ってはいけません。
| パターン | 試用期間中 | 本採用後 |
|---|---|---|
| 差をつけない | 25万円 | 25万円 |
| 差をつける | 23万円 | 25万円 |
| 時給換算 | 1,100円 | 1,200円 |
社会保険の加入
試用期間中も、加入条件を満たせば社会保険への加入義務があります。
加入条件
- 週の所定労働時間が正社員の3/4以上
- 2ヶ月を超える雇用見込み
有給休暇
試用期間も勤続期間に含まれます。入社から6ヶ月経過後に有給休暇が付与されます。
試用期間中の評価
評価のポイント
| 評価項目 | 具体的な観点 |
|---|---|
| 勤怠 | 遅刻・欠勤の有無、連絡の適切さ |
| 業務習得 | 教えたことを覚えているか |
| 態度 | 積極性、協調性、素直さ |
| コミュニケーション | 報連相ができるか |
| 適性 | 仕事に向いているか |
記録を残す
本採用拒否の際に「合理的な理由」を示すため、記録を残しておくことが重要です。
【記録すべき内容】
・遅刻・欠勤の日時と理由
・指導した内容と日付
・改善が見られたか/見られなかったか
・問題があった具体的なエピソード
・注意・指導の記録
定期面談
試用期間中に定期的な面談を行い、フィードバックを行います。
| タイミング | 内容 |
|---|---|
| 2週間後 | 困っていることの確認 |
| 1ヶ月後 | 業務習得状況の確認、改善点の伝達 |
| 2ヶ月後 | 本採用に向けての確認 |
| 試用期間終了時 | 本採用/延長/拒否の決定 |
試用期間の延長
延長が認められるケース
| ケース | 例 |
|---|---|
| 病気等で十分な勤務ができなかった | 長期入院があった |
| 評価が微妙で判断に迷う | もう少し見極めたい |
| 本人の同意がある | 本人も納得している |
延長の手続き
1. 延長の理由を本人に説明
└ 「〇〇の点でもう少し見極めが必要」
↓
2. 延長期間と条件を明示
└ 「さらに1ヶ月間」
↓
3. 本人の同意を得る
└ 書面で同意書をもらう
↓
4. 延長後の評価基準を明確に
└ 「この点が改善されれば本採用」
延長の限度
試用期間の延長は、合理的な範囲内でなければなりません。一般的に、当初の試用期間と合わせて1年を超える延長は認められにくいとされています。
本採用拒否(試用期間満了での解雇)
手続き
1. 事前の警告・指導
└ 改善の機会を与える
↓
2. 本採用拒否の決定
└ 合理的な理由があるか確認
↓
3. 本人への通知
└ 面談で伝える(書面も渡す)
↓
4. 退職日の設定
└ 通知後30日以上 or 解雇予告手当
解雇予告について
試用期間中であっても、入社から14日を超えた従業員を解雇する場合は、30日前の予告または解雇予告手当(30日分の賃金)が必要です。
| 勤務期間 | 解雇予告 |
|---|---|
| 14日以内 | 不要 |
| 14日超 | 必要(30日前 or 予告手当) |
本採用拒否の伝え方
【面談での伝え方】
「○ヶ月間、一緒に働いてきましたが、
残念ながら本採用は見送らせていただくことになりました。
理由は、〇〇の点で改善が見られなかったためです。
(具体的なエピソードを挙げる)
退職日は○月○日とさせていただきます。
最後まで責任を持って引き継ぎをお願いします。」
トラブル防止のポイント
採用時に明確に伝える
【面接時に伝えるべきこと】
・試用期間があること
・試用期間の長さ
・試用期間中の給与(差がある場合)
・本採用拒否の可能性があること
指導の記録を残す
問題があった場合は、指導の記録を残しておきます。
【記録フォーマット】
日付: 202X年○月○日
対象者: ○○ ○○
問題点: 3回連続で無断遅刻
指導内容: 遅刻時は必ず連絡するよう指導
本人の反応: 「気をつけます」と回答
改善状況: 1週間後、再度遅刻あり
改善の機会を与える
問題がある場合は、すぐに本採用拒否を決定するのではなく、改善の機会を与えます。
1回目: 口頭で注意
2回目: 書面で注意(記録に残す)
3回目: 改善されなければ本採用拒否を検討
よくある質問
Q: 試用期間中の退職は可能?
A: 可能です。労働者側からの退職は、2週間前の予告で可能です(民法627条)。
Q: 試用期間中に有給は使える?
A: 入社から6ヶ月経過していなければ有給休暇はありません。ただし、会社が独自に付与する場合もあります。
Q: アルバイトにも試用期間は設定できる?
A: 設定できます。1〜3ヶ月程度が一般的です。
まとめ
試用期間は、従業員の適性を見極める大切な期間ですが、正しく運用しないとトラブルの原因になります。
運用のポイント
- 期間は3〜6ヶ月: 長すぎず短すぎず
- 契約書に明記: 期間、条件を明確に
- 評価基準を設定: 何を見るか決めておく
- 記録を残す: 指導内容、問題点
- 定期面談: フィードバックの機会
- 改善の機会: いきなり拒否しない
試用期間を有効に活用して、良い人材を見極めましょう。
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