シフト管理の重要性
「シフトが組みにくい」「残業代の計算が複雑」「人手不足でシフトが回らない」。店舗経営においてシフト管理は大きな課題です。
適切なシフト管理は、人件費の最適化、従業員の満足度向上、そして法令遵守に直結します。
労働時間の基本ルール
法定労働時間
原則
├ 1日8時間以内
└ 週40時間以内
特例措置対象事業場
(常時10人未満の小売・飲食・理美容等)
└ 週44時間以内
所定労働時間と法定労働時間
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 法定労働時間 | 法律で定められた上限 | 1日8時間、週40時間 |
| 所定労働時間 | 会社が定めた勤務時間 | 1日7時間30分など |
ポイント: 所定労働時間を超えても、法定労働時間内なら残業代の割増は不要です。
変形労働時間制
なぜ変形労働時間制が必要か
店舗ビジネスでは、曜日や季節によって繁閑の差があります。
例: 飲食店の1週間
月: 暇(6時間でOK)
火: 暇(6時間でOK)
水: 普通(7時間)
木: 普通(7時間)
金: 忙しい(9時間必要)
土: 忙しい(10時間必要)
日: 忙しい(9時間必要)
→ 合計54時間(週40時間超え)
→ 通常だと14時間分の残業代発生
変形労働時間制を使えば、一定期間で平均して週40時間以内であればOKになります。
1ヶ月単位の変形労働時間制
店舗ビジネスで最もよく使われる制度です。
1ヶ月の総枠
├ 28日の月: 160.0時間
├ 29日の月: 165.7時間
├ 30日の月: 171.4時間
└ 31日の月: 177.1時間
この枠内に収まれば、1日10時間でも
残業代は発生しない
導入の手続き
| 手続き | 内容 |
|---|---|
| 就業規則への記載 | 変形期間、各日・各週の所定労働時間 |
| 労使協定(任意) | 10人未満なら就業規則のみでOK |
| シフト表の事前周知 | 月初開始の場合、前月末までに確定 |
1ヶ月単位変形労働時間制の記載例
【就業規則への記載例】
第○条(労働時間)
1. 当社は、1ヶ月単位の変形労働時間制を採用する。
2. 変形期間は、毎月1日から末日までとする。
3. 1ヶ月の所定労働時間は、以下を上限とする。
・31日の月: 177時間
・30日の月: 171時間
・29日の月: 165時間
・28日の月: 160時間
4. 各日の所定労働時間は、シフト表により
変形期間開始の7日前までに周知する。
5. 1日の所定労働時間は、4時間以上10時間以内とする。
シフト表の作成
シフト作成の流れ
1. 必要人数の算出
└ 時間帯別・曜日別の来客予測
2. スタッフの希望収集
└ 出勤可能日、希望休日
3. シフト案の作成
└ 必要人数 × 営業時間
4. 労働時間のチェック
└ 月の総労働時間が枠内か
5. 周知・確定
└ 変形期間開始前までに
時間帯別の必要人数
【カフェの例】
07:00-10:00 2人(朝の準備、モーニング)
10:00-12:00 3人(ランチ前準備)
12:00-14:00 5人(ランチピーク)
14:00-17:00 2人(アイドルタイム)
17:00-19:00 4人(ディナー準備、夕食)
19:00-21:00 3人(夜の営業)
21:00-22:00 2人(閉店準備)
シフト表テンプレート
【シフト表】2026年2月
月 火 水 木 金 土 日
1日 - A - - A A 休
2日 A - A A - A A
3日 休 A A - A 休 A
A: 10:00-19:00(実働8h)
B: 14:00-22:00(実働7h)
休: 休日
-: 出勤なし
月間労働時間: Aさん 168時間、Bさん 152時間...
残業時間の計算
変形労働時間制での残業
残業になるケース
1. 1日単位
└ 所定労働時間が8時間超の日: その時間を超えた分
└ 所定労働時間が8時間以下の日: 8時間を超えた分
2. 週単位
└ 所定労働時間が40時間超の週: その時間を超えた分
└ 所定労働時間が40時間以下の週: 40時間を超えた分
(1日単位で計算済みの分は除く)
3. 月単位
└ 月の総枠を超えた分
(1日・週単位で計算済みの分は除く)
計算例
シフト: 10時間勤務の日に11時間働いた
10時間(所定)を超えた1時間が残業
→ 1時間 × 割増率25% = 1.25時間分の賃金
休憩時間のルール
法定の休憩時間
| 労働時間 | 休憩時間 |
|---|---|
| 6時間以下 | なし |
| 6時間超〜8時間以下 | 45分以上 |
| 8時間超 | 60分以上 |
休憩の3原則
| 原則 | 内容 |
|---|---|
| 途中付与 | 労働時間の途中に与える |
| 一斉付与 | 原則として一斉に |
| 自由利用 | 自由に利用させる |
店舗ビジネスの例外: 小売業、飲食業、理美容業などは「一斉付与」の原則が適用されません。交代で休憩を取らせることができます。
休憩時間の設定例
【飲食店の例】
スタッフA: 11:00-12:00(ランチ前)
スタッフB: 14:00-15:00(ランチ後)
スタッフC: 15:00-16:00(アイドルタイム)
→ 交代制で常に人員を確保
休日のルール
法定休日
原則
└ 毎週1日以上
または
4週間に4日以上
└ 変形休日制(就業規則に規定が必要)
法定休日と所定休日
| 種類 | 意味 | 割増率 |
|---|---|---|
| 法定休日 | 週1日の最低限の休日 | 35%以上 |
| 所定休日 | 会社が定めた休日 | 25%以上(時間外扱い) |
例: 週休2日の場合、1日は法定休日(35%増)、もう1日は所定休日(25%増)
シフト管理のよくある問題
問題1: 急なシフト変更
NGパターン
「明日、人が足りないから出て」
「今週のシフト、変更ね」
OKパターン
事前にシフトを確定し、変更は本人の同意を得る
対策
- 予備要員の確保
- シフト交代のルール整備
- 応援体制の構築
問題2: 連続勤務
NGパターン
10日連続勤務
法律上は
├ 週1日の休日があればOK
└ ただし健康面・モチベーション面で問題
推奨
└ 6日以上の連続勤務は避ける
問題3: シフトの偏り
問題
特定のスタッフにシフトが集中
「Aさんは土日OK、Bさんは平日のみ」
対策
├ 月単位で公平に調整
├ 土日出勤には手当
└ 希望とのバランス
シフト管理ツール
紙・Excelでの管理
| メリット | デメリット |
|---|---|
| コストゼロ | 作成が手間 |
| カスタマイズ自由 | 共有が面倒 |
| 変更の周知が大変 |
シフト管理アプリ
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 自動計算 | 月額コスト |
| スマホで共有 | 操作に慣れが必要 |
| 希望収集が楽 | |
| 勤怠連動 |
主なシフト管理ツール
| ツール | 特徴 |
|---|---|
| ジョブカン | 勤怠管理と連動 |
| シフオプ | リクルート提供 |
| CAST | 飲食店向け |
| Airシフト | リクルート、無料プランあり |
勤怠管理との連動
タイムカードの重要性
労働時間の記録義務
├ 客観的な方法で記録
├ タイムカード、ICカード、PC打刻など
└ 自己申告は原則NG(やむを得ない場合のみ)
記録すべき内容
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出勤時刻 | 実際に業務を開始した時刻 |
| 退勤時刻 | 実際に業務を終了した時刻 |
| 休憩時間 | 実際に取得した休憩 |
| 残業時間 | 法定・所定外の労働時間 |
よくあるNG
✗ 着替え時間を労働時間に含めない
→ 制服着用が義務なら労働時間
✗ 朝礼前の準備を労働時間に含めない
→ 業務に必要なら労働時間
✗ 打刻後にサービス残業
→ 実態と記録を一致させる
人件費の最適化
人件費率の目安
| 業種 | 人件費率 |
|---|---|
| 飲食店 | 25-35% |
| 小売店 | 10-20% |
| 美容室 | 40-50% |
| エステ | 35-45% |
最適化のポイント
1. 時間帯別の人員配置
└ ピーク時に厚く、アイドル時に薄く
2. 繁閑に応じたシフト
└ 月初は薄く、月末は厚く等
3. 多能工化
└ 複数業務をこなせるスタッフ育成
4. 適切な採用
└ 希望シフトの多様性を確保
まとめ
シフト管理と労働時間の運用は、店舗経営の要です。
重要ポイント
- 変形労働時間制: 繁閑に応じた柔軟な運用
- シフト表: 事前に確定し、周知する
- 残業計算: 正確に把握し、支払う
- 休憩: 6時間超で45分、8時間超で60分
- 休日: 最低でも週1日は確保
- 記録: 客観的な方法で労働時間を記録
法令を守りながら、効率的なシフト運用を目指しましょう。
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